素直な心こそ、時代を動かす真の原動力
―― 強く、正しく、聡明に生きるために ――
◆「素直な心」は、人生を導く羅針盤
「素直な心になりましょう。素直な心はあなたを強く正しく聡明にいたします」
これは松下幸之助塾主の言葉です。
「強く、正しく、聡明に」――この三拍子がそろった人間は、まさに理想的なリーダーであり、社会人としても信頼される存在です。
しかし、「素直な心」とは、ただ人の言うことに従順であることを指すのではありません。私心なくくもりのない心、一つのことにとらわれずに、物事をあるがままに見ようとする心と言われています。
塾主は、「素直な心とはどういうものか」と問われた際、次のように話されたそうです。
それは、何事にもとらわれない融通無碍(ゆうづうむげ)な心のあり方であり、なろうなろうと心掛けても30年かかる。それでやっと『素直初段』とのことです。
この「30年かかる」という言葉の背景には、囲碁の例え話があります。「碁を一万回打てば誰でも初段になれる」という言葉があるように、素直な心もまた、1万日(=約30年)かけて磨き上げていく修養の道なのだというのです。日々、「素直になりたい」と願い、努力し続ける中で、ようやくその「初段」にたどり着く。これは、精神の修養であり、生き方の道でもあります。
◆私の実践 ――「素直な心 初段」を目指して
私は、松下幸之助塾主の思想・哲学は、“実践哲学”であると受け止めています。
著書を読むたびに、「なるほど、良いことをおっしゃっているな」と感心するだけで終わらせず、まさに“素直な心”で実践することが大切だと感じています。
とりわけ、塾主の著書『素直な心になるために』(PHP文庫)に収められている「素直な心を養うための実践十ヵ条」は、私の実践の指針になっています。
例えば、毎朝カーテンを開けて天を仰ぎながら「素直になりますように」と3回唱え、今日も素直な心で1日を始めようと誓うことを日課にしています。
また、人間関係や政治の判断など、迷いが生じた時には、自分に問いかけるようにしています。
「素直な心で言えば(考えれば)、どうすれば良いだろうか?」
私心なきとらわれない心で相手に向き合っているか、事に臨んでいるか、自分の内面を見つめ直すための問いです。
まだまだ実践は未熟ではありますが、一万日続けた先には、私もきっと「素直な心の初段」になれる――そう信じて取り組んでいます。
◆経営の原点にも「素直な心」がある
この「素直な心」は、単なる精神修養ではありません。実際に政治の現場や会社経営を含む”経営”においても、この心のありようが、成功への鍵を握っています。
「経営というのは、天地自然の理に従い、世間、大衆の声を聞き、社内の衆知を集めて、なすべきことを行っていけば、必ず成功するものである。その意味では必ずしもむずかしいことではない。」
「素直な心になれば、物事の実相が見える。それにもとづいて、何をなすべきか、何をなさざるべきかということも分かってくる。なすべきを行い、なすべからざるを行わない真の勇気もそこから湧いてくる。」
(『実践経営哲学』(PHP研究所)より)
また、天地自然の理に従うとは、「雨が降れば傘をさす」というようなものだと述べられています。
その実践は、共感する力、聴く姿勢、謙虚な心を軸に、リーダーシップと組織づくりに反映されています。
印象的なエピソードがあります。
ある日、松下幸之助氏のもとにテレビの試作品が持ち込まれ、技術者や役員たちがその性能について熱心に説明していました。その最中に、お茶を運んできた事務職の女性社員に対して、松下幸之助塾主は「どう思う?」「形や色はどうや」と率直な感想を求められたといいます。
その場には技術の専門家たちが揃っていたにもかかわらず、あえて現場の女性社員に意見を尋ねたのは、実際に製品を手にするのは一般の消費者であり、肩書きや立場にとらわれず素直な視点、現場の率直な声こそが大切だという塾主の深い信念があったのでしょう。
まさに、素直な心で衆知を集める実践の姿です。
◆混迷の時代にこそ、素直な心を
「素直な心こそが人間を幸せにし、また人類に繁栄と平和と幸福をもたらすものである」
素直な心とは、自分自身を変え、組織を変え、やがて社会をも変えていく原動力です。
「素直な心が成功を引き寄せる」――
この言葉は、松下幸之助塾主が、経営者としての実体験を通じて得られた確信に基づくものです。
日々の暮らしや仕事の中で、私たちはどれだけ自分の心を整えることができるか。
自分自身を見つめ直し、他者に対して誠実であろうと努める。
その積み重ねは、目には見えずとも確かな影響力を生み出し、やがて周囲へと静かに伝わっていきます。
そうした心のあり方は、共感を呼び、人を動かし、社会を調和へと導く力となるのです。
2025年の今、国際情勢はかつてない緊張を孕み、国内政治も混迷の時代を迎えています。
こうしたときだからこそ、お互いが「素直な心」で向き合うことの大切さが、いっそう問われているように感じます。
私心なく、くもりのない心で、
物事の実相をとらえ、真理に従って判断し、
「強く、正しく、聡明に」あろうと努める。
その姿勢のもと、衆知を集め、人類の叡智を発揮できる世の中を築いていくこと――
それは、まず一人ひとりの実践から始まるのだと思うのです。
そう信じて、私もまた今日一日、
「素直になりますように」と天に誓いながら歩みを進めてまいります。
🌱次回もまた、松下幸之助塾主の思想・哲学をもとに、今の時代を考えます。
公開予定日:2025年11月15日(土)
是非ともご覧いただければ嬉しいです^^


